第1回(2022年2月12日20:00~22:00)
第1回目の研究会には9名が参加した。
1.会の進行
初めの15分で研究会の概要と流れが説明され(20:00~20:15)、続く10分でそれぞれの参加者から簡単な自己紹介がなされた(20:15~20:25)。その後、3人ずつ3つのブレークアウト・ルームに分かれてグループワーク(20:25~20:40)、全体討論(20:40~21:10)、別の3つのルームに分かれたグループワーク(21:10~21:25)、全体討論(21:25~22:00)を行った。会議の時間が終わった後も、30分程度ディスカッションが続いた(22:00~22:30)。
2.3つの主たる論点
「論文について話す」「論文を通して実践について話す」という趣旨で議論が展開された。参加者がそれぞれの関心や会話の流れに基づいて様々な意見を交換したが、話された内容は「現代性」「物」「評価」の3つの論点に整理することができ、これらが相互に関連付けられながら実践の分析、教育制度、教育研究等について広く考察がなされた。
(1)現代性
第1回で扱った2論文はともに2000年に公開されたものであるが、現代的な視点から読んだときに、授業に型や法則が存在し、それらを探求することに方向付けられているようにみえる内容に対して若干の古さが感じられるという意見が多く出された。子どもの主体性が重視されるような授業や、実際に子ども主導で運営される授業がなされるようになっている現代において、これらの論文の依拠する前提にどの程度妥当性があるかということに疑問が付された。教師の特権的な地位を前提とする見方から、教師が子どもと同じように教材に向き合うone of themとみる見方への授業観の転回が必要ではないかという考えが生じた。
(2)物
現代の授業の文脈において、iPad、ICT機器、車いすと学習椅子、教室内の物の配置、キャスター付きの机などの物が子どもの学習に与える影響についての意見が交換された。主に、物が子どもの学習や参加を方向付けたり可能性を高めたりすることについての事例や考えが述べられた。同時に、低学年の児童や知的障害のある子どもの学習などにおいて、言語中心に分析することの限界についての指摘から、授業研究を言語以外の要素に開くことの意義について検討された。更に、物を有形の実体とみると、低学齢期の子どもの学習の方が物とのかかわりが多いように思えるが、無形の概念や原理にまで拡張すると、高校などの高学齢期の授業でも物とのかかわりが見られるのではないかという考えが出された。
(3)評価
授業を評価という点から分析することについての意見が交わされた。質的に行為を捉えることの意義は認められるが、他の教師との共有のためには信頼性や妥当性に基づく量的評価も重要である。しかし、信頼性や妥当性について追及すればするほど、それらを確保することの難しさに行き当たるという悩みが共有された。他者評価、自己評価ともに、評価者の立場や評価の切実性によって、教育評価の結果が異なることがあることについても指摘がなされた。教師と子どもにとっての、評価のフィードバックの教育的意義についても言及されたが、評価のフィードバックがどの程度の子どもにとって有効かを疑問視する意見もあった。評価という概念を用いることでクリエイティブな思考が停止する恐れがあるという指摘もなされ、評価というフィルターを外して学習を分析する意義についても検討された。
文責:楠見友輔
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